私的ネタ

ポチ 散歩へ行く

投稿日:2016年6月8日 更新日:


 朝日が昇る。僕の一日はまだ始まらない。まだ、寝ていよう。

 コツ、コツと足音がする。どうやら、活動を始めたやつらがいるようだ。でも、僕の一日が始まるのはまだ先だ。だって、明かりが見えないもの。声が聞こえないもの。音が聞こえないもの。

 「ポチ、おはよう」。そんな声がしたので見上げてみると知っている顔だ。じいちゃんだ。じいちゃんが起きたようだ。じいちゃんはいつも家の誰よりも早く起きて、散歩に行く。僕の頭をひと撫でしてから散歩に行く。僕もつれてってほしいけど、連れてってくれない。一人でいくのが好きなのかな? 僕の一日はまだ始まらない。

 ブーン、ブーン、あの巨大な生物がたくさん通るようになった。あいつは嫌いだ。大きくてうるさくてくさくて、とにかくいけ好かないやつなんだ。こっちに来るんじゃねえぞ。来たら、吠えてやるぞ。そろそろかな。僕の一日が始まるかな。いや、まだだ。まだ、もう少しかかりそうだ。今、やっと明かりがついた。

 まだか、まだか。とにかく、家の連中と来たらじいちゃんを除いてどいつもこいつも活動するのが遅いと来てやがる。もうとっくの昔にこっちは起きているというのに何をしているのか? 待ち遠しい。おお、何やらいい匂いがしてきたな。飯の準備か。早く食って、こっちにも来てくれ。早く、早く。待ちくたびれたよ。僕の一日はいつ始まるのかな?

 もういいよ。もういい。早く、来てくれないならもう寝てやるよ。もう来ても、無駄だぞ。来ても、起きてやらないぞ。来ても、起きずに無視をしてやる。せいぜい、困るがよいよ。僕が怒ったらどんなに怖いか思い知らせてやる。ここいらで思い知らせてやらないと一生このままだ。僕の一日は一生このまま、なかなか始まらないで終わるんだ。そんなの嫌だ。僕の一日は・・・・・・。

 カチャッ。ガラガラ。

 おや。あの音はもしかしてあの音か? 一日の始まりの音なのか?

 「ポチ。おはよう。元気かー」。いつもの声が聞こえてきた。やった・・・・・・。じゃない。僕は今怒っているんだ。怒っている態度を示さないと、一生このままだぞ。寝てるふりを続行しよう。「ポチ、ポチ、おや、起きていないのかい? 仕方ないね」。おや、おかしい。ご主人のやつが家に帰っていくぞ。飯は? 散歩は? 飯は? 散歩は? 一日は? 僕の。

 「ううぉーん。ううぉーん」

 ガラガラ。

 「おや、起きてたのかい?」。家の入口からご主人が顔を出している。気づいたようだ。尻尾を振らなくては。ふん、ふん、ふん。

 「おや、おや。朝だというのに元気がいいね」。ご主人が家の入口から出てきて、ご飯をいつものように丸い入れ物にいれる。いつも同じご飯なのが気になるが、まあいいよ、美味しいから。許してやるよ。ふん、ふん、ふん。

 「本当にご機嫌だね」

 ふん、ふん、ふん。美味しい、美味しい。なかなか美味しい。いつも同じのはずなのに。ふん、ふん、ふん。嗚呼、もう少ししかない。もっと食べたいのに。なんでこんだけしかないの?

 「食べたね? さあ、散歩に行くかい」

 「うぉっふ、うぉっふ」。ご主人は、鎖を丸太から外し、手に持った。どうやら、散歩が始まるらしい。

 僕の一日は今始まる。

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